マスターズ・チャレンジ・カップ
(00/05/20/at Higashi-Fushimi Ice Arena)

「いつまでも現役のままで」「自分にチャレンジする為の大会」
地球上のすべてのスケーターに乾杯!


05/20

小雨降る中、東伏見の駅に降り立つ。
スケートリンクはすぐ目の前。信号待ちをしていたら、ちょうど中からSさんが出て来た。思わず手を振って・・・はっ、しまった!

今朝、某掲示板で、「出場します」という寝耳に水の書き込みを読んでいたのだ。
声をかけたわけではないけど、競技前の選手にのーてんきに手なんか振ってしまって、あちゃあ〜。
内心、ごめんなさい〜と謝りながら、リンクの中へ。

全選手のコメント等も載っている、手作りのプログラム。300円。
「選手の方ですか?」と受け付けをしていた女の子に聞かれ、「ち、違います」と慌てて答えたが、ちょっと嬉しい(莫迦もの^^;)。
同じところで選手の受け付けもしていたのでした。
来るのもちょっと早かったかなぁ。観客席にはまだほとんど人がいない。

ジャッジサイドのほぼ真ん中、最後列の席に座る。ここも新横浜と同じような、透明フェンスがあった。
しばらくプログラムを読む・・・なんだかだんだん冷えて来る。。。寒い。。。寒い。寒いっ!!

「東伏見は寒いですよ」と言われていたが、ホントに寒い。
あわてて予備のカーディガンを着る。しかしこれは。。。19時までもつかな。。
実は、いつものリンク内装備より、ちょっぴりだけ手を抜いていた。ううう、事前の助言はしっかり噛み締めておくんだった。教訓。


13時、コンパルソリーから競技開始。
出場はAクラス2人、Bクラス3人。

はじめてまじまじと、コンパル競技というものを観た。
この種目が国際競技会などからはずされて久しい。昔も、オリンピックのニュースでちょこっと、くらいしか映らなかったし。稽古着で眼鏡をかけたみどりちゃんの真剣な顔をちょっと覚えている。

静まり返った場内。中央で選手が決められた図形を繰り返して描き、そのすぐ前でジャッジ団(3人)がじいぃっとそれを観ている(ジャッジも氷上にいる)。
トレースが終わると、とことこと近寄っていって、腰をかがめてそれぞれ図形の確認をする。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・何なんだ、この緊張感はぁっ! 数えるしかいないまばらな客席のせいではない、とにかく独特の静けさが漂っていて、それがますます緊張感をつのらせるような感じ。音楽など、もちろんなし。

確認が終わると点数の表示、おもむろに胸にぶら下げた袋からカードを取り出して掲げて見せる。おぉ〜、懐かしいスタイルだわ。
そ、それにしても、ジャッジ約おひとりさま・・・カードを出すのがあまりに遅いわ(^^;。袋をごそごそやって探しているのだが、目当ての数字がみつからないのか。順番くらい整理しておいてくださいよぉ。

さてSさんは、このコンパルにエントリーしていた。
滑走姿を見るのも初めてなのだが、それがこの競技会とは。
名前が呼ばれて、小さく拍手と声援(叫べるもんじゃありません、この空気^^;)。

最初の構えからスタート、ゆっくりと円を描いていく。もうこっちまで心臓どきどき、息をつめて見守る。
武史くん以外でこんなに緊張したのは初めてかも。

ひとつ終わって、ほぁっと溜め息。A、B両クラスとも課題は2つずつ。
AはF.I、F.Oのサークル8。BはI.ブラケットとF.O.ループ。
競技が全部終了したときにはかなりの脱力感があった。疲れた。。。 ただ見てるだけの人間がそんなコト言うなんてとんでもない話だが。これが氷上にいたらどうなってしまうのか。

『挑戦』とは、並大抵のことではない。
Sさん、ほんとにほんとに、お疲れさまでした!


続いてはアイスダンス。
コンパルソリーダンスが2クラスと、フリーダンスが1クラス。

この大会は、20歳以上で今季学連登録の無い人ならば、有級・無級、プロアマ問わずに参加できるとのこと。始めたばっかりの人でも、◯年前は選手として活躍していた人でも。
クラス分けは10歳刻みの年齢別(コンパルとダンスは難易度別かな?)。
だから本当にいろんな方が出ていて、不思議な感覚が有るとともに、ひたすら感嘆していた。

コンパルソリーダンス、Cクラスはダッチワルツとフィエスタタンゴ、Dクラスはフォックストロットとアメリカンワルツ。
すべてのカップルが、決められた同じステップを、2周くりかえす。
派手なリフトに目を奪われがちな最近のアイスダンスだけど、基本はステップ。ふたりで組んでのダンスステップ、原点。。。

長年ふたりで楽しんでおられるのか、年配の御夫婦カップル、ちょっとうらやましいな。
うちのあにさま、絶対やってくれないもんな・・・スケートはわたしよりずっと滑れるくせに(ま、似合わないといえば似合わない。ダンスは^^;)。

観ていて勝手に思っちゃったのね。
熟年カップルのきれいなコスチューム、女性のドレスに男性のモーニング姿、あれはおふたりの、年に一度の晴れ着、一番の正装姿。
一年に一度、ふたりで生きて来た軌跡を振り返る、それは素敵な晴れの日。

なぁんちゃって、これはほんっとに無責任な一観客の妄想に過ぎないんだけれどもー(^^;。
そんな思いをふとめぐらしてしまうような、そんな感覚。
こんな思いにとらわれる競技会なんて、他に、思い付かない。


フリーダンスまで終了後、整氷。
休憩時間などはないので、この整氷や6分間の練習時間に慌ててお手洗いに行っておく。寒いのでいつもの倍くらい往復したかも(^^;。

またその時間中にSさんに御挨拶したり、netでお名前だけ知ってる方に紹介していただいたり、嬉しい再会があったり、けっこうあちこちうろうろ。
気がつくと、客席がだんだん埋まって来ている。シングルの始まる頃には、かなり一杯になっていた。
どのクラスは何時から、って予定は事前に流れていたので、それぞれに合わせて観に来る人も多いんだろうな。

14時50分、シングル競技スタート。
男女別、年代別にクラス分けされていて、音楽は1分〜3分間。
60代以上のクラスから始まって、男女交互に若いクラスへと進んでいく。

最年長の女性はなんと71歳!
コスチュームを着て、音楽とともに滑っているのを観ていると、そんな年齢は忘れてしまう。
かわいくて楽しそうで、一生懸命で。そして本当にスケートが好きなんだろうな。
とてもうらやましくなった。いくつになってもスケートってできるんだよね、こんなに楽しく。

「◯子がんばれ!」ハンディビデオを構えた男性が声援をとばす。氷上には奥様だろうか。
そんなふうに時折かかる声援も、微笑ましい。

しかしほほえましいばかりではありません、演技は結構白熱。
年齢が高い方のクラスでも、果敢にダブルジャンプに挑戦する男性スケーターはけっこういるし、女性はきれいなスパイラルやスピンを見せてくれる!
しなやかな動き、情感豊かなアピール。派手さはなくても、高度な技がなくても、たとえ失敗したって、何かが、一生懸命さが伝わる。

40代クラスともなると、参加者も多いし個性も様々で観ていて本当に楽しい。
そのときにはわからなかったのだが、後から聞くと、もと選手の方、現ジャッジの方など、いろいろと出ておられたのだ。
また、net上でのお名前は、実は目にしていた方々も。
外国の方も参加している、とってもハッピーな振り付け! 観てるこちらも笑顔になる(^^)。

ミシェル・クワンが見せ場でやる、イン〜アウト(もしや逆?^^;)の長い片足でのスパイラル。見せてくれたのは40代男子の部で優勝した山本さん。
「おぉ〜お!」と笑顔混じりの嘆声。ダブルルッツにも挑戦されていた。ただただ感服のひとこと。
他のみなさんもパワフル。

40代女子優勝の岡村さん。「白鳥の湖」で、情感豊かに、なめらかに滑る。
こんな演技が観られるとは! 何だかもう、ひたすら感激。
全員の方について書きたいくらいだ。

30代男子、実は、とぉっても楽しみだったのがこのクラス。
昨年のマスターズ・国体と、net上で大ブレイクしていた木谷さん(^^)!
是非ともいつかはこの目で観てみたかったその噂の演技(笑)!

6分間のウォーミングアップから、ついつい目で追ってしまう。というか、意識しなくてもそちらに目が行ってしまうのだ。
会場で再会したtちゃんは「わかりますか? 今滑っておられますよ^^」はい、すぐにわかりました。
一度にかなりたくさんの選手が氷上に入っているのだけれど(これは選手にはけっこう大変だったんじゃないかな)、ぱっと目に飛び込んでくる。

音楽は「太陽にほえろのテーマ」(^^)。
銃をかまえたようなポーズから始まって、Candelのダルタニアン・ステップや前進ホップが混ざったり、とにかくひたすら楽しい。
また、ただ笑いをとってるだけなんじゃなくて、しっかりジャンプも決めるのがスゴイ。
両手を上げたダブルジャンプ、片手上げのアクセル。ラストはなんとエルヴィスばりの連続バタフライ〜♪

いや〜、笑いました。
また同時に、彼がなんで人気が有るのか、こんなに魅力的なのか、言葉では無くダイレクトにわかったような。
(余談、ではないけれど。木谷さんは30代男子で優勝されました)

30代女子トップバッター・比田井さんの音楽はYMO。懐かしい〜。
中国風の衣装で、そうかこういう解釈もあったのか・・・。あ、「ファイアー・クラッカー」って、爆竹じゃん。納得。

水沢さんの「Hava Nagila」、これって以前プルシェンコが使った音楽だぁ。一瞬同じ振り付けがあって、ファンなのでしょうか。
出だし、腰を低〜く落として片足に乗ってぐーーっと円を描いたのが凄かった!(どう表現したら良いのか、この技を)

コスチュームも皆さんいろいろ工夫してあって、あれはオーダーするのかな、自分でつくるのかな。
フィギュアやダンスをやってる人の、自作コスチューム奮闘話をときどき聞く。オーダーすると大層高価らしいので。。。
(はっ。子供の頃やらせてもらってたバレエの、発表会の衣装。スパンコールやきらきらテープなど、母親がつけてくれてたんだよなぁ。。。大変だったよね、ありがとう、おかあさん)

20代男子クラスにもなると、スピードやパワーもなかなかのもの。
アラブの王様風(?)の衣装で現れた北西さん、ジャッジの真ん前でくねくね踊ってみせたりして、めちゃめちゃ可笑しいよ〜(泣笑。お腹痛い)。
おまけに、ウエストに巻いてた帯が、ゆるんでだんだん下がって来て、落ちるんじゃ無いかと恐くてハラハラ。だってひっかかったら危ない〜。

ドキドキしてたら、なんとジャンプで飛び上がった瞬間、ぱらっとほどけて落ち、ちょっと脚をとられて転倒。しかし、どうも本人は気付いていなかったような・・・?
演技終了後、人に言われてあわてて拾いに行っていた。あ〜びっくりした。

すっと伸びた脚がきれいな高橋さん。
彼は、コンパル、アイスダンス、そしてシングルと、なんとフル出場だった。
同じ20代男子の小串さんも。
凄い。忙しい毎日の、間を縫って練習時間をつくっているんだろうか。
なんだか、もう。。。みんな、すごいよ。

女子の橋本さんが使った「Boogie Woogie Bugle Boy」。
これって、97 Japan Open で武史くんが使った音楽じゃない? 使ってる部分や編集は違うけど。


滑り終わった選手が、メイクはそのままで客席にいたりする。
なんか不思議な光景。
花束を抱えたまま、熱心にじっと観てたり、応援したり。
今まで見たことのなかった雰囲気が、この場にはあった。


競技がすべて終わって。
あとは表彰式と懇親会だが、わたしはそのまま帰路についた。
同じ方向に帰るtちゃんと一緒に。

スケートでも、芝居やライヴでも、帰り道が一緒の人がいるのは嬉しい。
さっきまで同じ空気の中にいた者どうし、感動を反芻できる。
今見てたこと、来シーズンのこと。tちゃんは電車の遅延で、Sさんの演技を見逃してしまったとのこと。残念!! この次はね(^^)。

いろんなことを喋りながら、頭の中は思いがぐるぐる。
今まで、大きな大会しか知らなかったけど。こんな感動が、フィギュアにはあるんだな。

観に行って、本当に良かった。
なんか年中行事になりそう。
しかしスケートっていいなぁ。滑れるようになりたいよう。そしていつか・・・いつじゃ!?? ばきっ。

おお莫迦もんの妄想が、おもわずふくらんじゃったくらいヾ(^^;、素敵な大会だったのでした。


♯ところで。
余談というにはあまりに、なのですが。せっかくの素敵な大会だったのに。

途中から、わたしと同じ列で、椅子少し隔てて観ていた若い女性おふたり。
時折もれ聞こえる会話から、かなりのスケート通のようだった。けど。
最後、飲んでいたコーヒーの空き缶を、椅子の下に置きっ放しで帰ってしまった。
つーか、置いて、席を立っていった。

あのさー。
わたし、こういうのえらい腹立ってしまうんです。
出口までの通路にゴミ箱あるのに。そのまま持ってって、ぽいってすればいいだけじゃないか〜。
自分で出したもんの始末くらい、自分でしろよぉ〜。
ひょっとしたら、その前に座ってた人のだったのかもしれないけど。それでも、気がついてはいた、よね?

なんかね、スケート好きなんでしょ、なんでその場を汚したまんま帰るの。
めくじら立て過ぎでしょかね。
基本だと思うんだけどなぁ。。。どこに行っても。
この缶、拾って自分のゴミと一緒に捨てた。



ま、それはともかく。99-00シーズンのラストを飾るにふさわしい、素敵な大会だったことは間違いありません。
(まだ関東ではもうひとつ、大会が残っていたのだけど・・・観に行くことができなかったので。これが、わたしの“締め”になったのだった)

そして、6月。
もうすぐ、新シーズンが始まる。