12/01

熊本の朝。やっぱりあったかい。
朝食の前に、新聞を買いにコンビニまで散歩したのだれど、長袖Tシャツ一枚で外に出て平気だった。

朝晩は冷えると聞いていたのだが。ま、寒くて震えるよりはよろしい!
まったく同じ時期に、昨年は旭川で氷道を歩いていたかと思うと、日本は小さいくせに縦が長くて、これは緯度の違いによるものか、地理は苦手だったのだ。

無節操にまとまらない頭でバイキングの朝御飯。
可もなく不可もなく、いわゆるホテルの朝御飯。付いてたんだから文句言わない。お米は美味しかった。越後生まれの私が言うのだから間違いない(そうなのか?)。


開場は確か12時、早めに行こうと早めのバスに乗る。
しかしアクアドームに着いてみれば、既に長蛇の列!
自由席のお客さんも当然居るのだからわからなくはないのだが、それにしたってこんな時間から。そういう私たちもこんなに早く来て(笑)。

今日から観戦、という友人も多いし、ますます賑やかになりそうだ。
そして、正に私にはこれからが本番。気合入れるぞ(いや、私が演技するわけじゃないんですが、気持ちの問題としては)。
全日本ジュニアの時に出会った、山形の女の子から連絡を貰って、ひとしきりお喋り。こんなところでこんな風に、繋がっていくっていいな。

開場。入り口を通って、ちらりとショップに目を走らせて……。
ん!!!!!

確か、昨日は出ていなかった。『World Figure Skating 6』!
すたすたすた。まっすぐそちらへ突進して、迷わず購入。
後で友人が聞いたところによれば、正にできたてのほやほや。印刷できた分だけを持ってきたとのことだった。
瞬く間に売り切れたらしいそれは、N杯開催中に何度も入荷していた。朝買いそびれた人も、夕方には無事入手。
さすが、売れる場所を心得ている(^o^)。

今日はスタンド席。
位置的には昨日とあまり変わらず、ジャッジと反対側のほぼ真ん中。向こう側が良かったなぁ〜、と思いつつ、しかし端っこじゃなかったことに感謝しよう。
昨日はリンクのフェンスで見えなかった、kiss & cry が見える。その向こうの通路も見える。

待ち時間、『WFS6』をぱらぱらとめくる。
スケートアメリカ、スパルカッセンカップ。
そして「本田武史−生まれながらのオーラ−」と題された記事。

う。駄目だ。いや、駄目じゃなくて。
余計に緊張してきた。心臓が、早鐘みたい。
男子ショートから、今日は始まる。


ファンファーレ。
リンクサイドに、選手の姿が見える。
アレ? 赤と黒の衣装は誰? ヤグくんの、昨シーズン「革命のエチュード」みたいな。彼、出てないよね。ひとまわり小さい感じだし。
はは。カナダのジェフくんでした。なんだかもう。

ウォーミングアップ開始。
武史くん、いきなり2番滑走なのだから。つくづく、ショートは早い番号を引く奴だと思いつつ。
滑走順が何番でも、誰が周りに居ても。
戦う相手は、目標は、自分自身の理想だからね、武しゃん。

衣装は黒のパンツに白の上着、スパンコールで金色の模様がついている。あー、これはやっぱり『ドン・キホーテ』。最後の期待が費え去る(いえ「ドン・キ」も大好きなんですが^^。『Sing Sing Sing』を、生で観たかったのよ……。大騒ぎする準備も万端だったのだが/笑)。

新調した衣装はノーブルな感じ。確かに昨シーズンのはシンプルで、その分地味でもあった。好きだったけど。
滑りやすいなら、どちらでも。

顔が……緊張しているなぁ。そう見える。ほんとにもう、まともに表に出る性質だから。
それも好きだけど(はいはい)。

ジャンプはタイミングを計ったり、決まったり、決まらなかったり。しかし、彼は直前のウォームアップすら、本番とは連動しなかったりするから。信じて見守るしかない。
うう〜、こっちも緊張するよ〜〜〜。


第一滑走、張民。
ウォームアップから気になっていた、何故にダルタニアンなデザインなのだ、どうしてそうなっちゃうんだ中国スケ連!(というより衣装サイド)
いつかの李成江くんもそうだっだか、今日の張民くんは配色までそっくり。

“ナガノのキャンデロロ”といえば、スケートファンでなくても記憶にあるというこの日本で、それは更に失笑を買いかねないぞ(汗)。全く余計な心配なのだが。
おっと、とりあえず演技演技。始まるって。

中国男子、彼もジャンパー。
けっこう緊張して観ていたのだが―――転倒。あらま。そんなこともあるんだ…。
スピードも勢いも、いまひとつ無いような。
高く想定していた技術点を、自分の中で下げてみる。しかし、意外と点数は出た。
4.8−5.0、5.2−5.3。これが今日の基準。


さて。
武史くんである。

大きく日の丸を掲げて、「がんばれ!」。お腹から叫ぶ。歓声が大きい、嬉しい。
最初のポーズ。後はもう、指を胸の前で組んで、祈るだけ。

4トゥ+3トゥ! 素晴らしい!! Huge!!!! 美しい!! ひゃっほー!
不安定さなど微塵も感じさせずに、高さも飛距離も申し分無しの、実にきれいな流れ。すぅーーっと、滑っていく。
いけ、いくんだ、このままいって!!

イーグルから3アクセル。っと、ステップアウトか〜〜あっちゃー。
と。

「おっと」で済む、と思ったのに、一拍おいて(といっても0コンマ1、2秒くらいだろう)ペタッ、と氷上に倒れてしまった武史くんが目に映った。私にはそう見えたのだ。
え、なんでそこで倒れちゃうの。ふんばりきれないって、そんな失敗じゃないだろうにまさかどこか具合でも悪いのでは。

もうその後は、心配で心配で心配で心配で。
だって、おかしいもの。あんなんで倒れるはずないもの。
不安がぐるぐる身体を廻る。

(実際冷静に見たらどうだったのかは後述するが、とにかくそう見えたのだ、そのときの私には)

ステップから3ルッツ、神様!
降りた。クリーン。きれいだ。
ほーーっと息を吐きながら、最後のステップ。あああ、しかし足元がなんだかおぼつかない?

いつもの見惚れる足捌きじゃない。まさか躓いて転ぶんじゃないか、また心配で心配で。
私が祈って持ちこたえるんなら、いくらでも祈ります!(そんなことは在り得ない。おこがましいにも程があるが、それが応援者というものなのです)

ラストポーズ。間を置いて、腕をおろす。
おどけた仕草も、今日は無い。
心中は、どんなにか。表情から窺い知ることは出来ない。
ただ、悔しいだろうな、って。それだけは、嫌というほど想像できる。自分自身に、怒っているかもしれない。

ああ、だからこんなときには、花束を振って呼びつけないで欲しい。
早く kiss & cry に帰してあげて、お願いだから。

点が出るまで、間があく。ジャッジも悩んでいるのだろうか。
完璧だったら、躊躇無くどどん! と出せるはずのところ。くーー、もう、胸が痛いよ。

E 5.4 5.3 5.3 5.4 5.1 5.4 5.3 5.3 5.2
P 5.7 5.7 5.6 5.7 5.7 5.8 5.8 5.8 5.6

演技中のメモは出来ないが、武史くんの得点だけはなんとか書き飛ばす。
エレメンツが低い。転倒は減点が大きいから、仕方が無い…(0.4を技術点に足してみましょう)

プレゼンテーションは、(実は)私が覚悟していたより、ずっと上が出た。ああ………。さすが、というのか、安堵、というのか。それだけの安定した評価は貰っているんだよね。ふう…。
とりあえず、これで後の演技者を観るしかない。


第三滑走、岡崎真くん。ブルーグレーのグラデーション、ゆったりと袖がなびく衣装。
地元九州の応援が凄い。もちろん私も「がんばれ!」

日本の男子シングル競技者で、25歳を過ぎてもアマチュア現役というのは大変な努力なのだ。
10月の熊本旅行中、偶然、彼の出演したTV番組を観て、その真摯な姿勢に胸を打たれた(NHK杯の番宣も兼ねた短いインタビューだった)。
そして、昨シーズンの全日本での頑張りと。

武史くんとは別の意味で、やはり祈ってしまう。頑張れ。
しかし……。
ジャンプ3ミス。果敢に4トゥに挑んだのだけれど。
スピンでも足がひっかかって、回れないシーンがあった。

エレメンツが3点台、うあ、2.5まである……。厳しい。
プレゼンテーションは上がった。4.8が何人か。

悔しいだろう。
巻き返しは、明日。

カナダのジェフリー・バトル。
ジュニアあがりの選手だ。
とにかくスピンが独創的、すごく凝っててポジションもきれい。
ジャンプの難度はまだそれほど高くない。“大人”になったときが怖いかもしれない。


第二グループのウォームアップ中に、掲示板に入れる下書きを打つ。
得点も入れて、結果がどうあれ終わったら速攻送りたいから。
公式ページの更新が遅いので、半ば自分に課せられた義務のような気分でもあって。


第二グループ。
アンソニー・リウ。彼も既にベテラン。
練習中はスピードがあると思ったのだが、本番ではやや遅いような……っと、転倒〜。4トゥからのコンビネーションのはずだったのだろう、一応2トゥもつけて。
そして、彼のSPには3アクセルが無い。ダブルで締め。
どうしても、基礎点が下がってしまうのは、仕方が無い。

田村岳斗くん。
白の上着に金色の飾り、黒いパンツ。実は今季初見のカルメン。
4トゥ、ぐっとかがみ込んで真っ直ぐ上に上がって、頑張って3回転! オーバーターン。
しかし持ちこたえる。おお。

終盤までミスなくこなし、大拍手の中、フィニッシュ!
ぴっ、と指なんかさしちゃって。
※この仕草、完全に背中しか見えない私には「いぇ〜い」の指差しかと思ったのだが。実はスピンの出を間違えたかなんかして、「あっちだった(^o^;」の指差しであったらしい……。はは。
彼が憎めないのは、こんなところだったりもする。


ブルガリアのイヴァン・ディネフ。
殆ど四大陸選手権と化した今大会男子で、彼だけが欧州組だ。
調子が良さそうでノーミス、しかしジャンプの難度は全般に低いので…。
評価はばらついた。

最終滑走、ロマン・スコルニアコフ。
この後女子のフリーもあるので、マリニナさんの姿は無い。
頑張ってるロマンくんには、いい演技をして欲しいよ。

常に女性をホールドしているようなポーズで、さらりとしたタンゴ。
「居ないはずの女性が見えたよ」「マリニナさんが見えた」「うんうん」
情熱的な音楽でも、彼の雰囲気は清潔。


得点、と、全員の順位。
武史くんが1位なのはわかってる。
そんなに凄い高揚感は無いのだけれど…。とにかくホッ、としたような。安堵したような、猛烈な脱力感。

私も相当、気を張っていたらしい…。

掲示板に、再三はじかれて焦る。何とか送信。
たくさん、アクセスしてくれていたのね、皆さんありがとう。

整氷、と、休憩。


ひとつ、空席を置いた隣に座っていた女の子が、実はネット上でのお知り合いであることがわかって驚いた。
こんなことって、あるのねー。嬉しい。


一通りの用を足し、席に戻ってボーっとしていると、突然アナウンスが入った。電光掲示板にも文字が浮かぶ。

「おめでたいお知らせがあります。先ほど、皇太子妃雅子様が無事、内親王殿下をご出産になりました………」

な、にーーーーーっ!!!!!

一斉に客席がざわめく。
拍手と同時に、悲鳴めいた声が混じったのは、気のせいではないだろう(^_^;。

タイマー録画……アウトだ。はははは、あはははははは。

新しい命の誕生は、実に喜ばしく、安産だったことに安堵する。
しかし、あまりのタイミングのよさに、笑っちゃうしかないんだなぁ。ここ一週間ほど、ヒヤヒヤドキドキしていたことが、どんぴしゃ。
一斉に携帯電話を取り出す人々。行動派mさんは、NHKに放送時間の問い合わせ。

はは、うちはあにさんも旅行中だし、も、しょーがないやぁ。
これもいい記念になるだろう。絶対に忘れないわ(笑)。



フリーダンス。
第一グループには日本のカップルが二組。日の丸を膝に広げて待つ。

りえちゃんけんちゃんが2番目に出てきた。
テーマは「ライジング・サン」、私には思い入れ深い喜多郎の『古事記』から。

衣装は二人とも完全に中国風。
うう、古事記にチャイナではまた欧米の皆様方の誤解を深めそうな^^;。しかし衣装そのものはなかなかに凝ってて良い。
ライジング・サンなら東洋、中国でもいいのか、な。

旗袍スタイルのりえちゃんのドレスは、今まで見た「チャイナチック」衣装の中では一番シックで美しい。黒地で前面片側に模様が縦に入っていて、実際チャイナドレスにこういうデザインあるもの。上品。やはり東洋人が着ると似合うわ。
けんちゃんは今日も髪を後ろに束ね、若武者、といった風情。

武史くんも使った「大蛇(Orochi)」から入り、間に不思議な歌詞の歌を挟んで、また大蛇に戻る。
ピタッと決めるところは決め、ヴォーカルの部分では柔らかく楽しげに、そして最後は力強く、朝日の昇るイメージを表して終わる。

うわ、私このプログラム好きかも! かも、じゃない、凄く好きだ。
今まで、この曲を使われるとどうしても武史くんがよぎったものだが、これは全然そんなこと無かった。
ダンスの難度としてはそれほど高度じゃないのかもしれないが、本当に良くまとまってて、またこの二人の醸し出す雰囲気が実にいい。ブラボー!!

4番目にのんちゃん木戸さん。
こちらはぐぐっとイメージを作り込んでテーマはジプシー・ダンス『Two Guitars』。Plushyが使った曲だ。
この選択は、吉か凶か。

今日は長髪をおろしている木戸さんが、大きく上体を振り上げる振り付けから始まる。
正面じゃないのが悔しい! 物凄く表情豊かな人なのに。
頑張ってる、頑張ってる、頑張ってる。プログラム通してそんな感じ。のんちゃんが、凄く上手くなった。情感の表し方とか。

やはり、難しい……のかな。
ODと一緒で、この雰囲気の踊り、この方向性でのアピールは。頑張っているんだけど!
思わず「良く頑張った!」で立って旗を振る。

得点が出る。
あ。りえちゃん組が、のんちゃん組を抜いた。
技術点は、のんちゃんたちの方が高いのだが。プレゼンテーション…。


第二グループ。
スピードがぐっと速くなる。衣装もぐっと派手になる(笑)。
余程のことが無い限り順位の逆転は無いだろうなんて、そんなことを思ってしまうラインナップ。

デンコワ&スタヴィスキー。
黒地にばっと太陽を描いたような衣装。
曲は『シルクドソレイユ』太陽のサーカス。なるほど。
なんとなくサーカスな雰囲気の振り付けだと思って、後から確認してみた次第。テーマは別にあったらしいのだが。

ドロビアツコ&バナガス。
テーマは『最後の叫び』。

ここ数年、こういう情熱路線を続けているけれど、なんとなく、なんとなく、そろそろもう、いいかな、って気が…。それが持ち味、なのだろうが。
彼らのプログラムは、98−99シーズン(武史くん『仮面の男』シーズンね)の『サンライズ・アット・アルカトラズ』だったか、あれが一番好きだな。
リズミカルで独創的で、似合うと思うのだが。

「音楽には乗ってるんだけど、リズムには乗ってないように感じる」との友人の言葉に、大きく頷いてしまった。
好みなのかな、しっかりとステップを踏んでくれるダンスが好きなのだ。

デュブレイル&ローゾン。
ああ! そ、そのぶわぶわむくむくの大仰なリボンは、帯のつもりなのね…(T_T)。
そして、その赤い前合わせ風の衣装は、着物のつもりなのね(大泣)。

『マダム・バタフライ』とくれば、こうなるのか。えーんえーんえーん。
振り付けは、随所が中国風な(中国の人も否定しそうだが)。間違ってる。間違ってるよぅ…。
演技後の挨拶も、両手を合わせて――――「ナマステ」?^^;;

そういえば、りえちゃんもそんな挨拶をしていたのだが、それには特に何も感じなかったのだから(むしろ、今年も凝ってるわねー(^^)なんて)、私の頭も大概偏っているかもしれないが。
しかし「知っててやってる」のと「知らずに思い込みでやってる」の違いは、大きいと思うぞ。

ご当地に合わせた(彼らは別に日本に合わせた訳じゃないと思うが)選曲・プログラムとは、実は相当にリスキーなのかもしれない。下手すると失笑モノになりかねない可能性。
(しかし、いつかのエルヴィスの「鼓童」は凄く良かったと思うから、これも力量か)

最終滑走、アニシナ&ペイゼラ。テーマは「リバティ」。
彼らもだんだん、ダンス、って感じがしなくなってきている。
昨今の傾向(流行? アイスダンス自体の方向性?)がそうなのだから、仕方の無いことかもしれない。

しっかりとリズムを決めてある、オリジナルダンスのほうが、好きかもしれないなー。
なんとなく。

ペイゼラ氏が転んだくらいじゃ、順位にさしたる影響も無し。技術点は少々下がったが。
最終順位も、上位陣には変化無し。

1位/A&P、2位/D&V、3位/D&S。

有川組が渡辺組を国際試合で抜いた、というのが、私的な事件であった。
どうなるのだろう、全日本。正に実力伯仲。楽しみだな。


整氷。


皇室の慶事で吹っ飛んだ今日のTV放送は、深夜にスライドすることになったらしい。放送時間を短縮されて。
日にちをずらして、なら録画のチャンスもあったが、残念ながら無理なのね。
放送してくれるだけ有り難いというもの。BSデジタルのほうは、飛んだままらしい。
まあ、あちらは生放送だから……仕方が無いか。

リンク外の通路には、大きなモニターが設置してあって、デジタル放送のデモンストレーションをやっている。
競技後すぐに出てくると、プレイパックが見られるのだが、こちらも今は皇室ニュース一色。
こうなったらお祝いがてら、日の丸ぶち揚げて君が代流そうな(笑)。気合いだ気合い。

いくぞ、女子フリー。


第一グループの中に章枝ちゃんがいる。衣装に合わせてか、練習用の手袋もダークカラー。
本来、この順番で滑る選手ではないだろうに。
2シーズン前の、名古屋N杯を連想した。あのときは、武史くんがフリー第一滑走だった。
あれを経験してからというもの、滅多なことでは慌てないくらい、私も強くなったのだった(はは。ほんとか?)。

頑張って、章枝ちゃん。

一番、アン・パトリス。
今日も愛らしい衣装。ジャンプはちょっとごまかしっぽいか^^;?
スピンはやはりきれい、バレエジャンプの方はきれい。

去年来日したジェニーちゃん同様、やっぱりまだまだジュニア。そして雰囲気が似てるんだよね。
“大人”になるとき、どう化けてくるか、それとも小さくまとまったままか。数年後が楽しみではある。

章枝ちゃん。
濃紺の、胸が大きく開いた長袖のドレス。肩から袖の部分がシースルー。
『月光』

ひとつ、ふたつとジャンプのミスが続く。心なしかスピードが落ちていくような気がする。
こんなとき、どんな気持ち? それでも投げ出せない、最後までやらなくちゃいけない。
フィニッシュのスタンドスピンはさすがに高速。

表情が冴えない。そうだよね。
辛かったね。
うまくいかないとき、哀しい音楽は更に哀しくなって辛い。

章枝ちゃんには、どちらかというと昨シーズンの「木星」みたいな、アグレッシブな音楽と振り付けのほうが、実はずっと似合うんじゃないだろうか。そう、皆と話し合う。
エレガントでもパワフル。本当は、そんな気がするよ。
あのプログラム、シーズン最後には大好きになっていた。

香奈子ちゃん。
ハイネックでノースリーブ、黒に銀のスパンコールのドレス。
今日もジャンプがうまく決まらなかった。ウォーミングアップでは、しっかり降りていたんだけど!
本来なら、もっともっと鮮やかな演技をするのに。
それでも笑顔を絶やさない。ほんとに、あっぱれだと思う。

体調整えて、次は頑張って。
全日本は、三週間後。

アニー・ベルマーレ。
どうしても、今回私との相性は順番が合わないようで(ごめんなさーい!)。
章枝ちゃん、香奈子ちゃんと続いたら、またしても意識が散漫に。
目の覚めるような演技では……なかったんだよね、多分…。


第二グループ。
トップで、恩ちゃんが出てくる。ブルーが基調の、肩と袖が肌色の衣装。
今日も緊張した面持ち。コーチの言葉に、うんうんうん、と強く頷いて。
一番頭に、3アクセルを入れている。
今日この会場で決まれば、凄いニュースになるだろう。

音楽は『ファンファーレ』。
少〜しスピードが足りないかな…と思っていたら、高〜〜い、2、アクセル。

かなり余裕のある、2アクセル。跳ばなかった。やめたんだ。
おそらくこれは、この瞬間の彼女の判断じゃなくて、周囲のアドバイス、もしくは指示だろうな。漠然と考える。
(当たってました。コーチと話し合って、今日は流れを見せるために、やめることにしたそう。跳びたかった、という彼女の見据え方が好きだ)

オーバーターンがひとつ、パンクがひとつ。後のジャンプは成功。
最後はこれでもか、と2アクセルの連続。笑顔。

演技中に見せたのとは違う、少しおとなしめの笑顔で挨拶をする。
ちょっと不本意なんだろうな、この出来は。
しかしテクニカルは、群を抜いて高い(注・得点とは、相対的なもの)。

プレゼンテーションが下がってしまうのは仕方が無いな。まだまだ、ジャンプを跳ぶためのプログラムという風情だもの。その点では、SPのほうが作品としてまとまっていると思う。

SPトップのアンジェラ。
薄いピンクのノースリーブのドレスで、『ジゼル』。

優勝に一番近いところにいるはずなのだが、どうしたことかジャンプがことごとくダブルに。
スタンドから観ていても、精彩が無い。
そして終盤―――糸が、切れた、かな。
気迫の無さ、が伝わってきてしまった…。

やはり得点はかなり低い。しかし、SPの貯金が効いて、この時点では1位。恩ちゃんが2位につけている。

ユリア・シュベスチェン、え、今度は『仮面の男』!??
(ひょっとして、武史ファン? などと囁き合ってしまったのはジョークとして^^;)
女性がこの曲を選ぶ、というのはどうだろう。固定観念は良くない、とわかってはいるが。

ただのバック・グラウンド・ミュージック。音が流れているだけ。
哀しいかな、どんな音楽と差し替えても、印象は変わらないんじゃないだろうか。
プログラム自体、ひとつの作品になってない気がする。

彼女の個性は、もっと別なところに在るだろう? なんだって……なぁ。勿体無い。

おっと、気を取り直して技を見れば、ジャンプは決まったり決まらなかったり、ダブルになったり。ビールマンスピンはきれいだった。

SP2位のリアシェンコ。
きれいなグリーン基調のドレス、やはり肩口から袖が肌色、きらきら付き。
途中ジャンプを失敗しつつも、最後の最後まで執念と気迫が感じられた。

ジャンプ前に、足を大きく持ち上げて踏み込んでしまう、あれがなくなると随分すっきりすると思うんだけど。
SPのときには気にならなかったが、今日はやたらと目に付いてしまった。
助走が長いのも。慎重に慎重に、って気持ちからかしら。

テクニカルは少々ばらついて、4点台もある……が!


「フィギュアは時々、びっくりするような順位の逆転があるんだよ」
日頃、あにさんなんかに説明していた典型が、目の前で起こった。

リアシェンコの順位が加味された途端、それまで1位だったアンジェラが3位まで後退、恩ちゃんがトップに、そしてリアシェンコ自身は2位に入った。
誰は誰と比べて上か下か、誰が何位で誰が何位で、その組み合わせは誰が上になってる数が多いから誰が何位とか。

ややこしくて私もよく説明し切れないけど、とにかくひっくり返ったのだ。
あとは、マリニナさんを残すのみ。


ワンショルダーの黒いドレス。
静かな静かな音楽。

ファーストジャンプで転倒。しかしその後は、こらえるこらえる。
観ているこちら側も手に汗を握ってしまう。
根性。執念。とにかく絶対に降りる、最後まで滑り切る。

そして緊迫した演技の後、柔らかい微笑み。
花束を受け取りながら、電光掲示板を気にしている。
得点が出ただけじゃわからない。誰が何位をつけたのか、それくらい接戦だった。

総合順位。会場には歓声と拍手が走る!

1 T. MALININA
2 Y. ONDA
3 E. LIASHENKO
4 A. NIKODINOV

う、わーーーー。
マリニナさん、逆転1位だ。そして恩ちゃん! 2位!!
やったね!!


笑顔の影には悔しさがある。
章枝ちゃん7位。香奈子ちゃん9位。
でも、これが今日の精一杯の結果。まだ、終わりじゃない。


表彰式。
トロフィや花束などと一緒に、“記念品”として、可愛い糸かがりの手毬が三人に贈られた。 こんなのって、今まであったっけ……?
ひょっとしたら、内親王ご誕生の、記念なのだろうか……? 真相は分からず。(今まで、ありましたっけか?)

日の丸が揚がる。
こんなに嬉しいものなんだ。
明日は、真ん中に揚げようね。静かに、そう考える。

会心の演技、そういう人はいなかったけれど。
「最後まで諦めなかった」その三人が表彰台に上がった。そう、思った。


BSデジタルのモニターの下に、放送時間の変更を書いた紙が貼られていた。
録画はダメになったけど、今夜すぐに放送を観れるというのも、いいかもしれない。
気になったことを確かめよう。表情も、知りたいし。

ロビーでは、「ビバ熊本!」な岳斗くんファンのはーこさんとハグし合って、こちらは1位なのになーんか落ち着いちゃってるなー、なんて思ったり。
出口を間違えて、タクシー・バス乗り場までかなりの距離を歩く羽目になったり。

タクシーに分乗して、運転手同士、電話で話してもらったにも拘わらず、意思が疎通してなくて別々のところでおろされたり(しっかりしてくれ、おっちゃん^^;)。
ま、すぐ近くだったんでじきに合流できたけど。

昨日より大人数で繁華街へ向かい、土曜日でどこも一杯の中、何とかお店を見つけて入って、明日への景気付けを改めてやったり。
馬刺しは昨日の方が美味しかったなー、としみじみ思ったり。
アーケードに「NHK杯!!」の看板が、大きく釣り下がっていて嬉しくなったり。


深夜、同じホテルに泊まっている友人らと部屋に集まって、一緒にTV放送を観る。
ドキドキの男子ショート。武史くん。
こんなにも緊張した顔だったとは。よっぽど、だったのに違いない。

4−3、なんて美しいの! 思わず拍手。TV画面を通してもわかる、この飛距離と高さは絶品だ。
そして問題の3アクセル。あれっ。

なんだ。全然心配すること無いじゃないか。角度のせいか現場の空気か私の心情のなせる技か。
いつものように(って^^;)すてんと転んで、しゅたっと立ち上がって。
ステップはやはり危なっかしいところがあったが、全体に会場で感じたよりも良い出来のように思える。

なんだー。こうだったのかー。心配しすぎだね、私。
ラストのポーズが変わっていたことにも、やっと気付いた。会場でも、確かに違和感はあったんだけど。

武史くんにとっては、「絶対勝たなきゃならない」試合。
SP2位でも、周りは許してくれないだろう。
だからこの1位発進には、大きな大きな意味があるのだ。
良くやった。そして、よかった。

明日はばっちり、その力を見せ付けて。
思い切り、戦って欲しい。目標は、貴方自身の理想。


さらに深夜、女子フリーなどの放送が始まる。
ネットを徘徊しながら観て、ベッドに入って観続けて、朦朧としてきて……。
マリニナさんの演技まではなんとなく覚えているのだが。ふと気付いたら、番組は終わってた。慌ててスイッチを切る。

明日。きっと大丈夫。
頑張れるよね。うん。



<<BACK  INDEX  NEXT>>